世界を翻弄するトランプ外交、背景に共和党の変質が見えるトランプ外交が世界を翻弄している。その背景には、20世紀初頭の共和党への先祖返りと支持者の変質が見える Photo by Keiko Hitomi

2018年11月6日に投開票が行われる米国の議会中間選挙まで、いよいよ3ヵ月を切った。8月7日にオハイオ州で行われた下院補選で苦戦を強いられるなど、上下両院で多数党の座にある共和党は、下院で多数党陥落の危機に瀕するほどにまで追いこまれている。劣勢の一因はドナルド・トランプ大統領への批判の強さだが、そのトランプ大統領自らが、共和党議員の支援に積極的に乗り出し始めた。トランプ大統領のコアな支持者に依存した戦略だが、共和党にとっては危うい賭けになりそうだ。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)

トランプ大統領が本腰
中間選挙で劣勢確実な共和党

「(投開票日の)60日前になったら、週に6~7日は(遊説に)出向く」

 7月26日、このようにトランプ大統領は発言し、来る中間選挙に向けて、共和党の候補者を精力的に支援する意欲を明らかにした。大統領は「厳しい戦いとなっている全ての候補者を支援し、勝敗ラインの上に押し上げる」として、自ら激戦区にテコ入れする考えを示している。

 投開票日まで3ヵ月を切った米国の議会中間選挙では、上下両院で多数党を占める共和党が苦戦している。2018年8月7日にオハイオ州で行われた予備選挙では、トランプ大統領が2016年の大統領選挙で大差の勝利を収めた選挙区で、現有議席を守ろうとした共和党が、投開票日当日には勝者が確定しないほどの大接戦を強いられた。

 特に下院では、共和党の多数党からの陥落を予想する声が増えている。米国のバージニア大学政治センターは7月24日のレポートで、民主党が下院の多数党を獲得する確率が、「(選挙戦が始まってから)初めて50%を超えた」と指摘した。

 選挙分析に定評があるクック・ポリティカル・レポートも、7月27日のレポートで、「下院で民主党が多数党となる可能性は極めて高い」と分析している。オンライン賭け市場の「PredictIt」では、下院での多数党交代を予測する割合が、6月初めから60%を上回り続けている。