米国と北朝鮮の両トップが史上初めて顔を合わせる6月12日の米朝首脳会談(トランプ・キム・サミット)。世界が注目するこのイベントを前に、北朝鮮と距離が近く利害関係が強い日本人・韓国人の「期待」や「不安」の声は、日々報じられている。一方、 地理的に北の脅威を日韓ほどは身近に感じていないと思われる米国人の本音は、日本ではあまり報道されない。とはいえ、そもそも北の核開発は世界最大の核武力を持つ米国に自国の存在を示すのが主目的だった。ツイッターで金正恩を「ロケットマン」と呼んで非難したかと思えば、「北朝鮮の繁栄を強く信じている」と綴るトランプ大統領の予測がつかない外交姿勢を受け、「世紀の対談」を前に米国民たちはいったい何を思うのか。現地で彼らの本音に迫った。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 長野美穂、文中敬称略)
世紀の首脳会談は6月12日に開催
気炎を上げるトランプ支持者たち
「私はトランプの交渉術に、大いに期待しているわよ」
そう語るのは、ミシガン州在住のジュディ・シュワルバック。ミシガン湖のほとりの人口1万2000人のエスカナバ市で、夫と共にキッチン・キャビネットを販売する店を営む63歳の女性だ。
彼女が住む北ミシガンは、大自然が広がり、狩猟やアウトドアスポーツの盛んな地域だ。地理的に半島の上部に位置することから「Upper Peninsula」の頭文字を取って「ユーピー」と呼ばれる。その住民たちは自らを「ユーパー」と呼ぶ。ジュディは2002年に同市の市長に立候補し、5年半の間、地元政治の現場も経験してきた。
「トランプには、キム(金正恩)と直接会って、北朝鮮に核ミサイル廃絶を約束させてほしい。世界平和のために。もし、一気に核兵器を手放させるのは無理でも、トランプなら何らかの取引を成立させるはず。北朝鮮で逮捕され拘束されていた3人の米国市民を、最近、釈放させたようにね」
ジュディの夫は、毎日どこへ行くにも「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」というスローガンが縫い込まれた帽子を被って歩く、筋金入りのトランプ支持者だ。だが彼女本人は、大統領選挙前はトランプ支持ではなかった。