『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日合併特大号の第一特集は「2018年版 決算書100本ノック!」。特集の発売に合わせた特設サイトでは過去の財務特集の人気記事や漫画などを無料で公開。今回は2018年4月21日号「マンガと決算書でわかる 会社のしくみ」から「エンジニアリング業界の雄・日揮の自己資本比率が59%と驚異的に高い理由」を紹介。利低過ぎたら駄目。でも、高過ぎるのも駄目──。健全性を表す代表指標の自己資本比率。エンジニアリング業界を見れば、その“適正値”がいかに業界や企業によって変わるかが分かる。(掲載される数字は全て雑誌発売時点のもの)
プラントなどの建設プロジェクトで設備設計、資材調達、建設等を一手に取り仕切るエンジニアリング会社大手の日揮。同社の中期経営計画には、驚異の数値目標が示されている。「自己資本比率50%以上」だ。
自己資本比率とは、財務の健全性を表す代表指標。「会社を経営するのに必要な元手全体(=総資本)」のうち、「株主からの出資分やこれまで蓄積した利益といった返済不要の資本(=自己資本)」がどれだけあるかを測る指標だ。
高ければ高いほど倒産しにくいことを示し、一般的には「30%くらいは欲しい」といわれる。ただ、借金をして思い切った投資をしなければ成長が鈍ることもある。近年はむしろ高過ぎることに警鐘が鳴らされることが多くなっている。
そんな風潮の中、日揮はなぜこれほど高い目標を掲げるのか。
エンジ会社の主な仕事は冒頭の通り、設計・調達・建設だ。大規模な設備の建設需要は得てして海外に多い。収益を上げるには、たとえ海外の辺境で設備を建設することになっても資材を安定調達し、必要な分だけ労働者を集めて納期通りに設備を造る必要がある。
だからこそエンジ会社はプロジェクトマネジメント能力の向上が重大ミッションになるが、もう一つ重要なことがある。工事を完遂させるべく、建設会社など取引先への支払いを決して滞らせないことだ。日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリングの専業エンジ御三家に一定の手元資金があるのはそのためである。
これにさらに念を入れているのが日揮といえる。プロジェクトには想定外の天候不順やトラブルが付きもの。おまけに、ひとたび工事が混乱すれば赤字に転落してしまうことすらある(上表参照)。