『いつかティファニーで朝食を』の魅力とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

【おとなの漫画評 Vol.2】
『いつかティファニーで朝食を』マキヒロチ
既刊12巻 2018年8月現在(新潮社)

 この作品は、オードリー・ヘプバーン主演の有名な映画「ティファニーで朝食を」(1961年)とは、まったく関係がない。大都会で働く女性の生活を描いている点では似ているが、内容はぜんぜん違う。単行本(コミックス)の表紙は、映画のヘプバーンをモチーフにしているのでクスリとさせるものの、オリジナルのストーリーである。アパレルの企画営業をこなす主人公が、家族や恋愛や仕事に悩みながら、毎回、おいしい朝食を求めて出歩くというユニークな物語だ。

 人生行路の苦悩と朝食のメニューはなんの関係もないが、この2つのテーマのディストーション(ひずみ)が効果的だ。

 本作は「月刊コミック@バンチ」(新潮社)に連載中で、掲載が始まったのが2012年だから、6年経過している。6年で12巻だから、年に2冊刊行されるペースだ。

高校の同級生だったアラサー女性4人の
日常と心の機微を描く

 主人公は東京のアパレル会社に勤める麻里子、第12巻の時点で32歳。そして高校で同級生だった典子(バーのママ)、里沙(ヨガのインストラクター)、栞(専業主婦)の3人が脇を固める。

 麻里子は数年間も同棲していた編集者の恋人がいたが、結局別れてしまう。精神的には相当落ち込んでいる。会社では長時間労働を強いられ、とつぜん命じられる出張も多い。この連載が始まった2012年、思えばまだブラック企業という言葉もなく、膨大な残業も休日出勤の連続も社会問題にはなっていなかったと思われる。

 毎日ヘトヘトだが、各地の店舗に回す商品の工夫や、現場のプロモーション企画によって最適なコストと利益をコントロールする面白さは味わっている。また、適度な規模の会社なので、社員が家族のようで楽しいことも多い。