「新築なんて紹介しても」
街の不動産屋のホンネ
不動産分野で最も広告宣伝をしている商品は新築マンションであることは、間違いないだろう。総戸数が数百戸ともなると、広告はネット、折込チラシ、電車の中吊り、ティッシュ配布、看板、テレビCMなど、ありとあらゆる手段が使われる。買う気のない人でさえ、毎日見かけてしまうくらいだ。
そんな周知の物件はさぞ街の不動産屋の間で話題なのかと言うと、そうではない。友達に不動産屋がいたら、「この物件、どうだろう?」と相談してみればわかる。返ってくる答えはこんな感じだ。
「そうねぇ、いいんじゃない」「どうかなぁ、この売主の物件、この前、施工ミスあったよね」
無関心というか、親身になってもらえないことに気づくだろう。彼らにとってこちらは顧客だ。その物件を扱っていれば自社が仲介できるチャンスかもしれないのに、なぜだろうか。これには理由がある。
街の不動産屋は仲介業を営んでいるが、仲介手数料以外にお金がもらえない。相談料は無料なのだ。ある顧客に物件を紹介していても、その顧客が別の業者で物件を決めれば、それまでの苦労はすべて水の泡と消える。不動産仲介の売り上げの上がり方(オール・オア・ナッシング)は全世界共通だが、これが厄介な代物なのである。
たとえばあなたが、不動産屋のAさんとBさんの2人に物件の紹介を依頼していたとする。最終的にはどちらかが紹介してくれた物件に決まるので、一方にしか成約手数料は払えない。「世話になったので、3%の仲介手数料のうち、1%はAさんに」なんて話はできない。
こういう状況だから、大きな案件になると、1つの取引に売主側と買主側の仲介会社、さらにその双方を仲介する会社といったいくつもの関係者が入り込み、「自分が情報を顧客に繋いだ」と主張するようなことはよくある。業者が5人いれば仲介手数料が5分の1なんてこともある。それでも10億円の物件だったら、仲介手数料は3000万円なので、1人あたり600万円にもなるからおいしいのだ。この間に入っている業者を「あんこ業者」と呼ぶ。あんこは饅頭の餡子(あんこ)という意味合いだ。