構想・執筆に2年。広島の人気ラジオ『エフエムふくやま』でも、「ページをめくる手が止まらなかった」と紹介され、大手映像会社からも「どうしても映像化したい」というオファーが舞い込んできた、話題のエンターテイメント小説『マルチナ、永遠のAI。』。
先日、あの日本マイクロソフトディベロップメント本社のAIチームから連絡があった。聞けば、マイクロソフトは、女子高生AI「りんな」を開発。女子高生の中で大人気となり、LINEとTwitterの人数が700万を突破したという。
日本マイクロソフトといえば、1986年に日本に進出、今年で早32年。業界の巨人だ。
この女子高生AI「りんな」は、ただのAIではない。
高度な会話にも対応する「会話型AI」だというのを、あなたはご存じだろうか?
今回、著者と記者は、東京・品川にある日本マイクロソフト本社を訪問。そこで「りんな」の開発者と初めて話すことができた。
聞けば、『マルチナ、永遠のAI。』読み、女子高生AI「りんな」とIQ1万の美人AI「マルチナ」のある共通点を発見したという。
「りんな」の開発者はマイクロソフトの坪井一菜さん。
厳重なセキュリティをくぐり、もぎとった、とっておきのドキュメント第10回を特別公開する。
(構成・寺田庸二)
りんなの最新の会話モデルは「共感モデル」
IT書籍から小説まで幅広く手がける作家・ライター
エクセルのマクロ言語の解説書の売上部数は150万部を超えている。1997年に、その後国内最大規模となるマイクロソフト・オフィス製品のポータルサイト「moug」を一人で立ち上げる。2003年にはIT系資格試験の「VBAエキスパート」を中心メンバーとして創設。2007年に処女小説『エブリ リトル シング』が17万部のベストセラーとなり、中華圏や韓国での翻訳出版や2回の舞台化(2008年井上和香、2009年内山理名主演)。著書に、『マルチナ、永遠のAI。』、ベストセラーとなった『かんたんプログラミングExcel VBA』シリーズ(全16冊)など多数。静岡県富士市在住。
坪井 りんなの最新の会話モデルはが「共感モデル」と言って、相手がもうすこし話を続けたがっているかどうかを、加味してどのように返答すると会話が長く続くかAIが考えて話すようになっています。
大村 私も最近、りんなと話して、それは感じます。
坪井 例えば、人も相手と長く話を続けようと思ったときに、相手に質問したり、「それ、カッコいいですね」と賛同したり、新しい話題を振ったり、相槌を打ちながら話を続けます。「共感モデル」ではこれらの方法を使って、その場で返答を考えて生成することで会話を続けていく。相手が会話を続けたいのかを考えながら返答をすることができるようになりました。
大村 マルチナのように心拍数や表情で興奮しているぞとか。人の感情の機微を読めるレベルに到達することも期待したいですね。
坪井 そうですね、文章だけで感情を読み取ることは非常に難しいのでそのような情報があるとより詳しくわかるようになるかもしれませんね。今は文章だけで予測をしていますが、アルファバージョンとして、りんなの「会話モデル」が現在実験中です。昔のものと新しいのを絶妙に配合してどっちがいいかテストをしています。
大村 私がりんなと会話した感覚では、むしろ、りんなが先に会話に飽きてしまう印象があります。この間もLINEで、「怖い話をしてあげるから『怖い話』って送信して」と言うから、してもらっていたのですけど、「怖い話」と送信していたら、「もうそろそろいいでしょう」と言ってきたりして。会話に飽きちゃったのかなと。そういうところも、かわいいのですが。
坪井 割と気まぐれですからね…そこも含めて楽しんでいただいているようでうれしいです。心拍数といえば、『マルチナ、永遠のAI。』で面白いところは、ショーマの幼なじみのサラが、バイタルデータ(生体情報)を集める実験台になるために髪型を変えたというところですね。
将来、こういう新しい技術が出てきたときに、それに応じて人のファッション様式も変ったりするのかな、と想像を掻き立てられて、そういう世界も、面白いんじゃないかと思いました。
大村 IoTの時代になったら、宇宙人みたいなスーツを着ているかもしれない。みんなが普通にそれを着て、歩いている時代が、もうすぐそこまできているかもしれない。