阿波踊りでは三味線、太鼓、鉦鼓、篠笛など2拍子の伴奏にのって連が踊り歩く。よくイメージされるのは「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ、踊る阿呆(あほ)に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」のリズムだが、有名連以外はあまり使わず、主に「ヤットサー、ヤットサー」の掛け声が一般的だ。

 徳島県では体育の授業や体育祭に採用している学校が多数あるほか、前述の通り徳島市に限らず県内各地でそれぞれ開催されるなど、代表的なお祭りである。現在では、東京・高円寺や埼玉・南越谷など全国各地で阿波踊りにまつわるイベントが開催されている。

 また徳島市には開催期間でなくても雰囲気を楽しめる「阿波おどり会館」という観光スポットがある。昼夜ともに有名連などによる演舞があり、一緒に踊りに参加することも可能。シンガーソングライターさだまさしさんの小説「眉山」の舞台で、松嶋菜々子さん主演で映画にもなったから、ご記憶の方も多いと思う。

「徳島市」vs「連」

 では今回、何があったのか。

 総踊りは例年の期間中、毎日午後10時スタートで実施されてきた観光客注目の最大イベントだ。4ヵ所の有料演舞場の1つ「南内町演舞場」で1000人以上が一斉に踊る迫力で人気を集めてきた。しかし、今年は累積赤字(後述)に苦しむ徳島市などで組織する実行委員会がチケットを4ヵ所で均一にさばくため、総踊りの中止を決定。4ヵ所の演舞場で有名連が分散するように手配した。

 しかし「総踊りは1年に1度、最大の晴れ舞台」と振興協会が反発。独自開催を決め、所属の連に場所や時間を通達し、SNSなどで一気に広まった。これに焦ったのが実行委員会。委員長の遠藤彰良市長が緊急記者会見を開き、振興協会に自粛を求めるなど、混乱に拍車が掛かった。

 2日目の13日午後10時。振興協会の連は南内町演舞場近くに集結し、ものものしい雰囲気に包まれた。徳島市幹部らが振興協会理事らに「やめてください」「危険です」と要請したが、周囲からは「帰れ」「邪魔だ」と罵声が飛んだ。結局、連は制止を振り切って踊り始めた。この辺が、テレビで繰り返し流された映像だ。

 連や実行委はもとより、地元警察も察知し、トラブルが起きないように厳戒警備を敷いた。連は予定の商店街へ一斉になだれ込む。踊り手たちは例年通り一糸乱れぬ演武を披露し、事前に情報を収集していた観光客らは歓喜しながらスマートフォンで撮影していた。