今後の展開予想
「最悪のシナリオ」とは

 トランプ・エルドアン両者の強硬姿勢が変わらず、お互いに引くに引けない状況になることは、世界の政治・経済を不安定化させる可能性が高い。中間選挙を控える中、トランプ大統領は通商・外交面で各国に強硬な姿勢を示し、点数を稼ごうとするだろう。それがどの程度続くのか、先行きはかなり読みづらい。また、トルコのエルドアン大統領も、自らの強権を誇示するために、“やられたらやり返す”の発想で米国に対抗するだろう。

 米国とトルコの関係は、一段と冷え込む恐れがある。その中で、最悪のシナリオが顕在化すると身構える市場参加者は、徐々に増えている。米国がトルコに対して一段と強硬な姿勢で圧力をかければ、トルコからの資金流出が加速するだろう。その影響は、新興国全体での株価、対ドル為替レート、債券価格の下落=トリプル安へと波及する可能性がある。それが現実のものとなれば、世界経済には無視できない下押し圧力がかかるだろう。その状況は、世界経済のメルトダウンというべき状況と考える専門家もいる。

 今すぐに世界経済がこのような状況に直面するリスクは、抑制されていると考えられる。ただ、今後の米国とトルコの関係次第では、急速に先行き不透明感が高まり、世界経済の減速懸念が高まるという展開も排除はできない。

 重要なポイントは、今のところ米国とトルコがどこで妥協しあうか、落としどころが見えないことだ。その見方から、多くの投資家がリスク回避を念頭に、“守り”の資金運用に方針を転換し始めたとみられる。それを示唆する動きとして、新興国株式のインデックスに連動するETFからは資金が流出し始めた。トルコショックを受けて、新興国通貨の為替レートの変動性(ボラティリティ)は急上昇し、2015年半ばから2016年年初にかけての新興国市場混乱期のレベルに迫っている。

 それでなくても、世界経済は、秋の米国中間選挙、英国のEU離脱(ブレグジット)、米中の貿易戦争、中国経済の減速懸念などの不透明要因を抱えている。トルコショックの発生によって、それにもう1つ頭痛の種が増えたことになる。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)