Photo:PIXTA
半導体の台湾TSMC熊本第2工場の工事が「中断している」と報じられた。第1工場は、環境変化もあって当初予定の需要がなく稼働率が上がらないと指摘されている。地元では不安や困惑が広がる一方、「悪い話ではない」という声も。当初計画よりも「先端品」を製造するための“良い”見直しであれば、期待は一気に高まるだろう。TSMC熊本の重要性、その成否が北海道に工場建設中の、日の丸半導体・ラピダスをも左右する事情を探る。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
TSMC熊本第1工場は“失敗”なのか?
半導体業界の競争は日増しに激化している。先端のAI半導体の需要が急速に拡大する一方、電気自動車(EV)の進捗が遅れそうなこともあり、既存の半導体の需要の伸びは鈍化傾向にある。
現在、先端の半導体製造分野では、台湾積体電路製造(TSMC)がトップを走っている。同社は回路線幅4ナノメートル(ナノは10億分の1)のラインで、米エヌビディアのGPU(画像処理半導体)などを製造するが、供給が需要に追い付いていない状況だ。
一方、回路の線幅が10ナノメートル以上の旧来分野では、TSMCの製造ラインの稼働率は上がっていない。TSMCが日本に建てた熊本第1工場は、旧来型の12~28ナノメートルの半導体素子を製造する能力を持つが、今のところ期待されたほどの需要がないようだ。
TSMCは熊本第2工場を「先端の半導体」製造に切り替えるために、工事を中断し設計の見直しを検討していると報じられた。4ナノメートル回路線幅の製造ラインを構築し、先端チップの需要をより多く取り込むことを狙っている可能性はある。
国内の半導体企業も対応が必要になるはずだ。12月半ば、2ナノメートル回路線幅の先端チップの国産化に取り組む半導体メーカー・ラピダスが、新たな出資を取り付けたと報じられた。狙いは、次世代のAIチップの受託製造体制を確立することだろう。
ラピダスのプロジェクトの成否は、わが国の半導体産業の再興、さらには日本経済全体の復活に大きな影響を与えるはずだ。官民挙げた迅速な意思決定がいかに必要か、順を追って見ていこう。







