「『ファンのために』って、言葉だけじゃダメなんです。球場に来てくれる人のなかには、遠いところから初めて来てくれる人もいる。そういう人たちに『野球って素晴らしいスポーツなんだ!』と好きになってもらえるように、僕らはいつも全力でプレーしなくちゃいけない。今では毎試合、応援に来てくれる熱心なファンだって、最初は自分のような気持ちでプレーしている選手を観て感動したり、『すごい!』と思ったから来てくれているはずだと思うんですよ」

 まだ物事の区別がつかない幼少期に、両親や祖父母に連れられ、初めてスタジアムで野球を観戦する。プロフェッショナルなプレーに潜在意識が刺激され、選手たちが見せてくれた笑顔が、なぜかずっと記憶の片隅にインプットされている。

 そうやって、人は野球が好きになる。

 大人になっても、スタジアムで野球を観れば童心が蘇る。

 普段は出すことのない大声を張り上げ、無邪気にタオルを回す。そこは、無意識化で非日常を体験できる場所。だからこそ、筋書きのないストーリーを純粋に楽しめる。

 彼らもまた、野球を通じて至高のドラマを描く、脚本家のひとりなのである。

田口元義
1997年生まれ。福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル紙などの編集を経て2003年からフリーライターとなる。プロ野球、高校野球を中心としたスポーツ記事を雑誌やウェブサイトに寄稿。アスリートなどの書籍の構成も行う。

(本記事はVICTORYの提供記事です)