第一稿に愕然

 そして、第一稿があがってきた。
 だが、愕然とした。

「こんなんじゃない。
 この原稿じゃ、この著者の100分の1もいいところが出ていないじゃないか」

 怒りにも満ちたやるせない感情!
 この著者のポテンシャルはこんなもんじゃない。本当に私自身が感動した原稿を正直に読者へ届けたい。ここで絶対に妥協することはできない。
 私はすぐさま行動した。

 唐池氏の原稿に、「これとこれとこれがほしいです!!」「ここはすばらしいです!」「こういうのはいらないので、こんなエピソードと体系だったノウハウを入れてください」と、渋谷の某喫茶店にこもり、金曜の夕方にビールを飲みたい気持ちを封じ込めて、必死に赤入れした。

 これでダメなら、決裂覚悟!
 店員から見たら、悲壮感すら漂っていたかもしれない。
 ただ、一読して、ファースト読者の私を感動させられなければ、多数の読者を感動させることはできない。

 だから、決裂してもいい!
 でも、心の底からこうしたいという希望を、これでもかと正直に伝えることで、本当に永く売れ続ける書籍にしたい。ただそれだけだった。

 この時点での遠慮は死を招く。読者のためにならない。
 著者と体当たりで真剣勝負するからこそ、面白い本が生まれる。
 その気持ちだけだけで、ペンに魂を宿した。
 そして、「エイヤ!」とメールの送信ボタンを押した。
 はたして、返事はくるのか?