読者の皆さんは、乗車券だけで利用できる特急車両が存在することや、特急が途中の区間から各駅停車になったり、また、快速や普通列車として使用されていたりするのをご存じだろうか。女性で唯一の鉄道ジャーナリスト・渡部史絵氏が今回はJRにスポットをあて、知ったら一度は利用したくなる特急車両事情を解説する。
JRでは急行が存在しないのに
なぜ今でも生きているのか
日頃出張や家族旅行などのように、鉄道で遠距離移動する時、新幹線や特急列車を利用することは多いだろう。通常、JRの新幹線や特急列車を利用するには乗車券(切符ともいう、以下乗車券)の他に、特急券などが必要となるが、こうした車両はクロスシートとリクライニング機能を持ち、日頃通勤などで使う車両とは違う、グレードの高いものである。
出発地のA駅から目的地のZ駅までの物理的移動だけを考えれば、普通列車でも特急列車でも目的地に到達することができるが、特急列車を利用すれば、到達時間の短縮と客室設備の充実を手に入れられるわけだ。その対価が、特急料金を払うという行為にあたる。
ちなみに、特急の格下にあたる急行という列車も制度上はあるが、現在JRで定期的に走っている急行列車は残念ながらない。
ところが鉄道の現場では、急行列車が今でも生きている。というのも、特急とは特別急行の略であり、急行の中に含まれるものであるからだ。
東日本旅客鉄道(JR東日本)の乗車券類のルール本である旅客営業規則によると、「特急料金」などの見出しは一切存在しない。見出しで存在するのは急行料金など「急行」という表記だけである。そしてこの「急行」の条文の中に「特急」という表記がなされている。これはまさに「急行」の中に「特急」が含まれるということを明文化しているものだ。