おそるべき「唐池砲」がやってきた
すると、奇跡的に、おそるべき「唐池砲」が返ってきた。
前回とまったく違うじゃないか!!
これだ! これですよ! 唐池さん!!
この原稿がほしくて、魂をこめて赤入れしたのだ。
嬉しくてたまらなかった。その気持ちを率直に唐池氏に伝え、喜んでいただいた。
これから、読者のみなさんにお届けする『感動経営』は、7章立て49項目、全336ページ。
私が著者に惚れ込んでつくった本です。
1987年に「三島(さんとう)JR」と揶揄されていたJR九州が抱えていた赤字は300億円。それが30年後の2017年には500億円の黒字に。社長就任以来、じつに800億円も改善している。
こんな経営者は、なかなかいないでしょう。
特に、私が驚いたのは、37グループ会社の中の「外食事業」。
JR九州発足6年目に、唐池氏が部長として行ったときの外食事業の売上が二十数億円で赤字が8億円。その外食事業を引き継いで1年目に赤字を5億円に、2年目に2億円に、3年目には黒字化させた。
そして、2002年2月2日には東京・赤坂に「うまや」を出してしまった。
今、このお店は大繁盛で、上海まで出店。赤坂のお店はその佇まいが本当に素敵。ぜひ一度行ってみていただければと思います。
一鉄道会社の経営者が成し遂げたこととして、この外食事業の実績は特筆すべきことだと思います。
私が唐池氏に惚れ込んでいるのは、鉄道以外のやったこともない新規事業を「夢」の力で全社員をインスパイアさせ、見事、目標をクリアさせてしまったこと。
これから全業種で必要となる「インスパイア型リーダー」の典型が、唐池氏だと思うからです。
とんがった経営者が大好きな私は、これまで数々の経営書を担当しました。
そのほとんどが、著者の処女作です。
1坪、羊羹と最中の2品で年商3億円! 吉祥寺・小ざさ社長・稲垣篤子著『1坪の奇跡』、人口4700人の過疎地でおはぎが2万個売れるミニスーパー・さいち社長・佐藤啓二著『売れ続ける理由』、ホタルがいる「産廃会社」が大人気テーマパーク化している石坂産業社長・石坂典子著『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える!』、7度の崖っぷちから大復活した日本レーザー社長(現会長)・近藤宣之著『ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み』、油まみれの鉄工所から大変身したHILLTOP副社長・山本昌作著『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』など、個人も会社も逆境と屈辱から這い上がり、今やすごい経営をし続けている方ばかりだということに気づく。
これが、私が惚れ込む経営者の共通項なのかもしれない。
処女作はとにかく燃える。日本一熱くなる!
今回の『感動経営』も、唐池氏のほんとうの処女作をつくるんだ、という気概で臨んだ。
数々の経営者を取材していると、悩みのひとつが、社長自身も社員も、ストライクゾーンばかりを狙ってボールゾーンに手を出さないこと。
ボールゾーンに「次の金塊」が眠っている。そこにバットを出さないとジリ貧、ということはわかっているのに、なかなか勇気が出ない。
30年前に、JR九州が置かれた立場は、ボールゾーン、いやクソボールを振らなければ明日はない、という状況だった。
だからこそ私は、あらゆる業種の人がヒントとなる、逆境と屈辱から這い上がってきた経営の原理原則を支えるノウハウとマインドが学べると思い、この著者に体当たりしていった。だれが何と言おうと、絶対に、面白くて役に立つ本に絶対するぞ! と。
この本の中には、ジャスラックにわざわざ許可を取って特別掲載した、著者の「替え歌」もある。ここはとことん面白く、口ずさむだけでなぜか元気が出る。
今回の本は、著者と私と校正者と関係者が、何度も何度も、推敲を重ねながら、ほかならぬ、私自身がとことん感動しながらつくった本。
装丁と本文デザインは、「ななつ星」や新型高速船「クイーンビートル」をデザインした、あの水戸岡鋭治氏。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演したときのコメントがこちら。今回の『感動経営』は、金の箔が光に当たると、あざやかな光沢を放ちます。
「ななつ星」の驚くべきエピソードから始まり、「感動」「元気」「楽しむ」「伝える」「気づく」「つくる」「時代を読む」の全7章、49項目の底流に流れるメッセージを感じていただきたい。ぜひ本書を楽しみにしていただければと思います。