そっけない経営者の態度に
私はどう反応したか
その時がきた。
開口一番、私は切り出した。
「『本気になって何が悪い』を読みました。
感動しました。
唐池さんがこれまでに語ってこなかった、経営の原理原則の本をお願いしたい。感動的なエピソードとともに、技術と精神がドライブがかった本をつくらせていただきたいのです」
だが、表情はそっけない。
見るからに、やる気がなさそうだ。
唐池氏は言った。
「いまはすべてを書き尽くした。
新しい本を書く気力がない。
その場ですぐに決断するのが私のモットーだが、あえて今日は決断しない。 ごめんなさい」
『本気になって何が悪い』の執筆がさぞかし大変だったのだろう。
相当な疲労感が垣間見えた。
だが、私にはそんなことは関係ない。
与えられた時間はたったの30分しかないのだ。
冒頭からコテンパンに鼻をへし折られた。
数々の気難しい著者を口説き落としてきたが、この先制パンチはさすがにきつい。
でも、根がスーパーポジティブな私は、あの手この手で「本気度」を伝えた。
しかし……
むなしくノーサイド!
心の中で無情なホイッスルが聞こえてきた。
約束の30分はまるで3分のように消え去った。
「次の予定がありますから……」
唐池氏はあえなく席を立った。
この瞬間、あえなく飛び散った。
これで終わりかと思った。
もうチャンスはないか。うーん。
だが、どうしてもあきらめきれなかった。
この著者は、私がずっと求めてきた、トテツモないスケールの持ち主だ。
ここであきらめてしまうと、このレベルの著者とはなかなか会えないだろう。
そんな直感があった。
中小企業から大企業まで、経営の「原理原則」を説き、しっかり「笑い」をとりながら、しっかり「ノウハウを体系化」できる著者は、唐池氏しかいない。
そのゆるぎない確信があった。
これは譲れないものがある。
だから、絶対にあきらめることはできない。
あきらめることは、編集者として万死に値する。
本気でそう思った。
だから、ひるまず行動した。
JR九州の広報の方に働きかけ、今給黎にも手を尽くして、唐池氏に徹底的に向かっていった。