日の当たらないジュニア指導者
体操界は不満がくすぶっていた?

 世間的に手腕が評価されるのは活躍したプロを指導したコーチだ。一方、選手としての土台となる基礎を教えたジュニア指導者に日が当たることはほとんどない。こうした不条理を感じているのは、他の競技のジュニア指導者にも数多くいるはずだ。

 今回の朝日生命体操クラブの引き抜きについての真偽は明らかではないが、体操界に同様の不満がくすぶっているともいえる。引き抜き対象になっているのは、ジュニア指導者が才能ある素材に基礎をしっかりと教え、すでに全国大会などで好成績を収めている選手。ジュニア指導者から見れば、おいしいところを横取りされているようなものであり、そうした現場の不満が背景にあるのではないだろうか。

 選手に対する指導者には強い思い込みがあるのも確かだが、トップ対象の指導者とジュニア指導者には評価に大きな差があるのは否定できない。

 そんな不満が出にくい指導のシステムを作り上げたのがサッカー界だ。日本サッカー協会では指導者のライセンス取得を制度化しており、Jリーグのトップチームを指導できるS級を頂点に、その下のA級、ユース(高校生年代)対象のB級、主にジュニア対象のC級、D級と指導者がライセンス別に分類されている。指導の実績はジュニアから積むことになり、その役割を果たすことで評価される。そのカテゴリーで満足できる指導者はそのままでいいし、上を目指すならライセンスの級を上げていけばいい。その仕組みがあることで、小学生から年代を経てトップまで指導のバトンがスムーズに渡るようになっているわけだ。

 ライセンス制度を採用することで指導者の問題がすべて解決するとはいえないが、過去の実績や名声を持つ指導者が評価される状況は、今回の体操協会のような騒動を招く一因にもなっているといえるのではないだろうか。

(スポーツライター 相沢光一)