農業には映画や小説と同じ力がある

 しかし、公式見解として表明したことがない、もうひとつの理由がある。

 それは、農業がひとを元気にする仕事だということだ。

 ひとを元気にすることは、素晴らしい。
 私は、自称映画好きで読書家である。
 だから、映画をつくったり、小説を書いたりするひとたちを尊敬する。

 それは、映画を観て元気になるからだ。
 小説を読んで感動するからだ。

 その元気と感動のもとをつくっている映画監督や俳優、作家の方々には、いつも敬意を払うとともに感謝している。

「元気をありがとう。感動をありがとう」

 映画や小説と同じように、農業もひとを元気にする。
 農業の本質は、食物をつくり出すことだ。
 食物は、生命維持のためのエネルギーとなる。
 食物の大半が、米、麦、野菜、畜産品など農産物に由来する。
 農業が存在しないと、人類は摂取すべきエネルギーのもとをほとんど失ってしまう。

 農業は食物を提供することにより、ひとの生命を維持している。
 さらには、食物はひとの元気と活力を生み出す。
 すなわち、農業はひとを元気にしているのだ。

 ななつ星も、農業の恩恵にあずかっている。
 ななつ星では、九州各地の農家から厳選された農産物を食材として料理に使用している。
 どの食材もお客さまから評判を得ている。

 特に、阿蘇駅のホーム上につくったレストラン「火星(かせい)」での朝食は圧巻だ。
 テーブルには、阿蘇のとれたて野菜がずらっと並んでいる。
 ビュッフェ方式で自由に選んでもらうわけだが、朝というのに、高齢のお客さまも次々に新鮮な野菜をお皿にとっていかれる。

「阿蘇の野菜っておいしいわね。ついつい食べてしまう」

 九州の農産物がななつ星のお客さまを元気にしている。