資産運用に別のリスク

 スルガ銀行が手掛けたような主に貸家向けのローンの残高は、既にバブル期を超えている。これが遠からず不良債権化する事態は、金融業界も行政もある程度覚悟しているだろう。

 地方金融機関について、筆者が貸家向けのローン以上に心配しているのは、主に私募投信による資産運用での過大なリスクだ。

『日本経済新聞』(9月6日付朝刊)によると、今年2月時点で金融機関が保有する投信残高は約20兆円あり、このうち10.5兆円を地銀が保有し、メガバンクの5.3兆円を大きく上回るという。2014年末と比較して、メガバンクは6割増しである一方で、地銀は投信保有残高を2.2倍に拡大した。

 私募投信の形で運用すると中身が隠れる。為替リスクに加えて信用リスクがある外国債券もそうとは分かりにくいし、海外のREIT(不動産投信)などに投資してもリスクが見えにくい。

 加えて私募投信の場合、期中の価格変動で含み損が発生しても決算時の損益に計上する必要がない一方で、分配金や儲かった場合の売却の利益は本業の利益の一部に計上できる。

 この構造は、1990年代に多くの金融機関が実質的な決算操作に使った「仕組み債」と似ている。1990年代につぶれた生損保の中には、証券会社から見て仕組み債ビジネスの“超上客”が含まれていたが、当時の彼らと似たリスクと含み損を、地方の金融機関が抱えている可能性が小さくない。

 法人向けの証券ビジネスのセオリーからいって、収益の上がらなくなった金融機関は素晴らしい潜在顧客だ。一方で資金を持ちつつ、毎期毎期の決算を作りたいと思って苦しんでいるのだから、そもそも無理な運用に走るし、損が出た場合にこれを隠そうとするので、次のビジネスの客になる。

 また、悪知恵を伝えたくはないのだが、私募投信の中に時価評価のごまかしが利く仕組み商品などを仕込むことで、損失が出た場合の計上を先送りしながら、当面分配金だけを取るような「決算対策商品」を組成することは十分可能なはずだ。

 私募投信による運用を中心とした地方金融機関の運用リスクについては、行政も既に警戒しているところだろうが、表面の基準価額ベースの含み損だけを見るのではなく、ファンドの中身の時価評価が正確であるかどうか、加えて運用全体のリスクをどのように把握しているのかについて、徹底的に調べるべきだろう。