「こういう時期こそ、強いリーダーシップが必要だ」
有力企業の経営者の多くは、このように口にする。その通りだろう。景気の良かった時期は、経営者の器量に関係なく、自然体の経営姿勢でも、企業はそれなりの収益を上げることができた。
ところが、昨年9月、世界経済の牽引役だった米国がコケた。それにより、景気はさながら崖から突き落とされるように悪化した。むろん、わが国も例外ではない。
と言うよりも、わが国は輸出依存度が高いぶん、実際には他の主要国よりも大きな悪影響を受けている。稼ぎ頭だった自動車、電機、機械、鉄鋼などの機関産業は、現在、総崩れの状態だ。わが国の景気は、下り坂を転げ落ちるように悪化し続けている。
しかも大きな問題は、今回の景気悪化局面においては、単なる通常の在庫調整ではなく、米国がコケるという「大きな構造変化=パラダイム・シフト」が起きているということだ。
パラダイム・シフトが起きるときには、「今まではこうだった」という従来型の発想は通用しない。環境の変化に対応するためには、過去の成功体験に固執せず、新しい発想と柔軟な頭脳を持った人材が必要になる。それは、企業でも、国家でも同じことである。
最近、トヨタ自動車やホンダ(本田技研工業)、ソニーなどの有力企業で、経営者の交代が発表されるケースが増えて来た(編集部注:ソニーでは、ハワード・ストリンガー会長兼CEOが、中鉢良治社長に代わり、自らが社長を兼務することを発表)。そうした現象は、現在の環境変化への対応策の1つとも考えられる。強いリーダーシップが発揮される組織は、変化の中でも生き残ることができるからだ。
一方、旧態依然としたリーダーしかいない組織は、環境変化に対応できず、破綻に追い込まれる可能性さえある。
今のような激動の時代には、「強くて有能なリーダーシップは、生き残りのために最も重要なファクター」と言えるだろう。そう考えれば、米国の政界において、オバマ氏が新大統領に選ばれたのは、相応の説得力がある。