中学を卒業して少年工科学校に入学する生徒の背景は、さまざまだ。「自衛官になりたい」という強い志望も、親との険悪な関係による「合法的家出」も、貧困からの選択もある。大学進学の夢を抱いて入学する生徒も少なからずいるのだが、初志貫徹する生徒は多くない。3年のコースを修了した後は、1年の訓練を経て、下士官として自衛隊内でのキャリアを開始することができるからだ。Bさん自身も、現在は幹部自衛官として責任ある立場にある。

 ともあれ1991年3月、AさんとBさんは少年工科学校を卒業した。卒業後、Aさんを含む17名は自衛隊を離れ、Bさんを含む270名は自衛隊内でのキャリアを歩み始めた。Aさんが九大法学部に進学した年次は、入学までの足取りとともに現在のところ不明だ。少年工科学校時代の貯金を元に、受験勉強に励んでいたのかもしれない。いずれにしても、1994年までには大学進学の夢を果たしていたものと思われる。

なぜ急激に困窮し
そして住宅を喪失したのか

 九大法学部に入学した後のAさんの歩みのうち、現在のところ判明している事実は以下の通りだ。

・1998年(26歳)、九大大学院修士課程に入学。憲法学を専攻。

 その後博士課程に進学するが、博士論文は提出せず、2010年に退学(38歳)。在籍可能期間満了に伴い在籍できなくなったものと推察される。

・2015年(43歳)以後、研究室を1人で使用していたが、夜間のみ。他の院生とは接触していなかった。

・2017年3月、専門学校などの非常勤講師職を失う。

・2017年(45歳) 3月・4月はほぼ無給。同年5月・6月の月給は14万5000円。同年6月、家賃が払えなくなり、10万円の借金でしのぐ。同月、昼間の宅配便の仕分けのバイト(週4回)を開始。

・同年12月、夜間も肉体労働のバイト(週4回)を開始。

・2017年6月から2018年5月までの間に住居を喪失したと見られる。

・2018年5月、Aさんが研究室に寝泊まりしていることを九大が把握。