「それに、給料は日割月給です。アルバイトなら100%日払い、または週払いです。窮迫しているときには、本当に助かるのは確かです」(Cさん)

 Aさんの窮迫状況から見て、「日銭」の必要性は切実だっただろう。さらに、時間の面からのメリットもある。

「現場によっては、『早上がり』ができることもあります」(Cさん)

 工事現場・建設現場の多くでは、作業時間が定められている。ICT業界のように、疲れ果てた心身で果てしない残業を続けることはない。この点も、余暇時間で制作や研究を行いたい人々にとっては、むしろ好都合なのかもしれない。

 Aさんが、どのような種類の肉体労働を行なっていたのかはいまだ判明していない。しかし、必死の就労にもかかわらず、Aさんは住居を喪失した。

「奨学金」という重石に
がんじがらめにされた可能性

 住居を喪失したAさんは、母校・九大の研究室に寝泊まりし始めた。法学部をはじめとする人文社会系学部は、伊都キャンパスへの本格移転段階となっており、ほぼ取り壊しを待つ状態となっていた。そして悲劇的な結末に至る。

・2018年7月、Aさんが寝泊まりしていた研究室のある棟の移転が開始される。

・2018年8月 Aさん、「事態が悪化」と親しい人々に記す。九大がAさんに退去要請を行う。

・2018年9月6日 Aさん、研究室に放火。遺体で発見される。享年46歳。

 Aさんは、九大時代の友人や教員たちと、良好な関係を保っていたようだ。人柄・能力などについて、ネガティブな証言は特に伝えられていない。窮迫状況をメールその他の手段で伝えるコミュニケーション能力も残っていた。