それが2004年から始まった新医師臨床研修制度では、初期研修として2年間、主要な科を全て順番に経験する総合診療方式(スーパーローテート)の研修が必修となった。内科系、救急、地域保健に加え、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科からも2科目選択し、幅広い診療能力を養うものだ。同時に、2004年からは、自分の出身大学以外の希望する病院での研修を志望することも可能になった。

 この制度によって、地方大学の医学部や医科大学を卒業した医師が、母校の医局ではなく、都市へ流出したり、都市部の大学の医局でも、別の病院にとられてしまったりという事態を招いた。また近年では、必ずしも医局に属さない医師も増えつつある。

 医局での人員確保が従来よりも困難になり、その分人数が減ることは、医局の弱体化を意味する。さらに、人員不足から勤務医の長時間労働を前提としなければ、ますます業務がまわらなくなる。

 かたや医局には有給のポストが少ない。収入は市中病院やクリニックなどのアルバイトで補填し、常勤と同じ勤務をこなしながら、手当が支給されない無給医もまた、その長時間労働のシフトを担う。この2004年のスーパーローテートの初期研修制度により、長時間労働の常態化がますます進み、「離職可能性の高い」女子よりも男子を合格させ、医局に採りたがる風潮が強まったと見ることもできる。

医局の弱体化を受け、
「新専門医制度」で医局の復権へ

 ところで、こうした医局の弱体化が進むなか、2018年4月から、新専門医制度という医師のキャリアの積み方に影響を与える新制度が始まった。

 従来、国家試験の合格者は2年間スーパーローテート方式の初期研修を受けたあと、次の3年ないし5年で、自分で選んだ科の専門医となるべく、研修を受け、資格審査や試験を経て専門医の認定を受けていた。専門医の認定は、学会ごとに行われていた。

 これを新専門医制度では、中立的な第三者機関である「日本専門医機構」が認定することになる。そのための研修プログラムは大学病院や都市部の規模の大きい病院でのみ実施され、その数は絞られている。なお、都市部に医師が偏りすぎないように、都市部の病院での受け入れ数を制限するなど、調整も行われる。

 これまで初期研修を行っていた病院は約1100あるが、新専門医制度の研修が行える病院は大学病院を含め300から400しかない。このことから、新専門医制度の実施は、大学病院の医局の復権をもくろんだものという見方もある。

 以上が医局の事情であり、長時間労働を招くひとつの背景である。