電車運休後に帰宅を促す!?
災害への備えが甘い日本企業
災害に対する備えは台風に限った問題ではない。今年6月に発生した大阪北部地震は、朝のラッシュ時間帯を直撃したため合計14万人が車内に閉じ込められた。また1998年に大雪で首都圏の鉄道各線がマヒ状態に陥り、多数の列車が駅間で立ち往生した事例もある。
この1998年大雪を教訓に、現在では大雪が予想される場合には、あらかじめ列車の本数を減らして運行するようになった。減便とは一部の列車を運休させることであり、広義の意味での「計画運休」と言えるだろう。
JR東日本をはじめとする関東の鉄道事業者は、今のところ台風に対してJR西日本のような計画運休を行う予定はないとしているが、JR京葉線や東京メトロ東西線の強風による運転見合わせなど、影響が想定される場合は前日から告知を行っている。
しかし、まだまだ日本企業には、災害時に社員を守る対応をしていない会社が多い。今年8月、大阪府が設置した「南海トラフ地震対応強化策検討委員会」が、大阪府の企業5000社を対象に行った、BCP(事業継続計画)と防災の取り組みに関する調査によると、65%が災害時の出社や帰宅に関する社内基準を定めていないと回答した。実際に大阪北部地震の対応として「従業員の自己判断に任せた」「全員出社させた」と回答した企業が30%を超えるなど、災害に対する備え、対応が十分とは言い難い実情が明らかとなった。
今回の台風21号でも、出勤させたものの午前中に帰宅命令を出した企業や、中には電車の運休後に帰宅を促すという本末転倒な対応をした企業もあったようだ。
他方、BCPを策定済みまたは策定予定の企業は、そのきっかけとして7割以上が「近年多発する自然災害への備え」「過去の被災経験から」と回答しており、災害が頻発した今年のような時こそ、大きな契機となることも示している。
いつ発生しても不思議ではない災害に対し、従業員の安全を確保し、事業の継続を保証する体制を構築することは、もはや経営者にとって当然の責任である。
大雪、大雨、酷暑などの異常気象や日本列島周辺の地震活動活発化が示すように、今後も災害が増えることはあっても減ることはなさそうだ。従業員と顧客の安全を守る上で、もはや想定外は通用しない。これを機に、「空振り」であっても「見逃し」しない心構えと備えを、JR西日本の計画運休の取り組みから学んでおきたい。