今年の台風21号では
私鉄も計画運休に踏み切った
しかし今、計画運休は徐々に社会に浸透しつつある。今回の台風21号は、自然災害の猛威をわれわれに改めて見せつけた。屋根をはぎ取り、電柱をなぎ倒し、自動車が空中を舞う記録的な暴風の下、計画運休がなければ人的被害はさらに拡大していたとみられる。
JR西日本だけではない。今回は私鉄でも南海電鉄と京阪電鉄が初めて計画運休を実施。企業側も社員に早めの帰宅を促したり、商業施設は臨時休業を決めたりするなど、計画運休を前提とした対応が目立ったように、JR西日本の取り組みをきっかけに、社会が少しずつ変わり始めている。
大規模災害時に、鉄道事業者が特に恐れているのは、駅間で列車が停止して大勢の乗客が車内に閉じ込められる事態だ。乗客の安全を確保しながら、救助を手配しなければならず、二次被害の恐れもある。対応に時間を要し、運転再開も遅れることになる。
JR西日本には苦い経験もある。2015年7月の台風11号では、計画運休を実施せずに運行を継続していたが、急に雨が強まり雨量が規制値に達して運行がストップ。駅間に長時間列車が立ち往生し、乗客が救急搬送される事態となった。
この反省をふまえて、JR西日本は「空振り」を躊躇して「見逃し」をしてはならないというスタンスを確立。運行休止や再開のタイミングを検証し、事前の情報提供を強化しながら、乗客に計画運休の必要性と有効性を訴え続けたのだ。
JR西日本の広報担当者は「今後も、空振りすることはあるだろうが、安全と利便性のバランスを計りながら計画運休を行っていきたい」と語った。