訂正の内容はこうだ。

「平成26年3月3日の当欄に『この女性、金学順氏は後に東京地裁に訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳の時再び継父に売られたなどと書いている。』とあるのを、『平成3年から4年に発行された雑誌記事、韓国紙の報道によると、この女性、金学順氏は14歳のときに親から養父に40円で売られ、17歳のときその養父によって中国に連れて行かれ慰安婦にされたという。』に訂正します」

 訂正された記事は、櫻井よしこ氏が2014年3月3日の「美しき勁き国へ」に載せた「真実をゆがめる朝日報道」と題する文章だ。

 慰安婦としての過去を証言した金氏を紹介した植村隆・元朝日新聞記者が書いた記事(1991年8月11日)を取り上げ、「捏造を朝日は全社挙げて広げたのである」と断罪した。

 櫻井氏は「この女性、金学順氏は後に東京地裁に訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている。植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じず、慰安婦とは無関係の『女子挺身隊』と慰安婦が同じであるかのように報じた」と「美しき勁き国へ」で主張した。

 ところが、「訂正」によると、継父ではなく養父に40円でキーセンにとして売られたことなどという記述は「訴状」ではなく、韓国新聞や日本の雑誌に書かれたことの「孫引き」と櫻井氏は認めた。

 元慰安婦が自ら訴状にしたためたことと、メディアに載った記事の引用では、主張の根拠の重みがまるで違う。

 この「事実誤認」は札幌地裁で進められている民事訴訟で植村氏が指摘した。櫻井氏は法廷後の記者会見で「率直に改めたい」と認めた(2016年4月22日)。

 ところが産経新聞は訂正を渋り、植村氏は17年9月、東京簡裁に調停を申し立てた。裁判所の調停ででやっと産経新聞は訂正に応じたが、櫻井氏が「誤り」を認めてから訂正が出るまで2年近くかかった。

 産経は、この事実誤認を認めたら「歴史戦の敗退」を印象付ける、と憂慮したのだろうか。

「強制連行」に触れず
「人身売買」を主張

 同様の訂正はワック出版が発行する月刊誌「WiLL」(2018年7月号)でも出された。櫻井氏が書いた「朝日は日本の針路を誤らせる」(2014年4月号)の訂正で、産経の正論コラムと同時期にほぼ同じ論評が載った。