膵臓がんを発症しても
克服できないわけではない

 がんの発生は遺伝的な要因よりも生活環境による影響が大きいといえます。その意味では誰しも膵臓がんを発症し得ます。私たちは、難敵である膵臓がんにどのように向き合い対処すべきなのでしょうか。膵臓がんを発症したら、闘いは非常に厳しいものにはなりますが、治療を受けて救われる可能性はゼロではありませんし、予防に取り組むことは決して無意味ではありません。

 現に、私が外科医として駆け出しの頃、派遣先の病院で膵臓がんの手術を担当させてもらった患者さんが、その後5年以上その病院に元気に外来通院されていたという報告を受けたことがあります(膵臓がんで5年間再発がなければ根治したと考えて差し支えない)。

 また、定期検診の腹部エコー検査を契機に膵臓がんが発見されて根治的な手術が施され、その後順調に軽快されている患者さんを現在、経過観察中です。さらに、ステージ4aと診断され、ギリギリ手術ができる状態で治療に挑み、5年間の抗癌剤治療の後、術後10年を問題なく経過し、膵臓がんの治療から卒業できたという方もいます。

 膵臓がんであっても決して克服できないわけではないのです。

膵臓がんの発生部位によって
手術後の予後が異なる

 膵臓は、胃の裏側にある長さ15cm重さ80g程度の小さな臓器。体の奥深いところに位置しており、胃の他に十二指腸、胆管、門脈、脾臓など複数の臓器に隣接しています。大昔の解剖書には脂肪組織と書かれており臓器としては認識されていませんでした。そして、いわゆる五臓六腑に含まれていません。

 しかし、膵臓は生きるためのエネルギー産生に必須である、食べ物を消化する機能と血糖を維持する機能を持ちます。膵臓は複数の消化酵素を分泌する機能を持っており、食べ物が摂取されると十二指腸へ分泌されます。糖の処理については、膵臓がなければまず全くコントロールできません。筋肉が糖の代謝を手助けはするものの、膵臓なくして安定的な血糖値の維持は不可能です。膵臓を手術で全て除去した場合には、血糖をコントロールするためのインスリンの投与が一生必要になります。