新型クラウン15代目となった新型クラウン(トヨタ自動車提供)

「いつかはクラウン」のフレーズで知られ、庶民の憧れだったトヨタ自動車の「クラウン」が、モデルチェンジした。15代目となる新型は6月26日に発売され、受注台数が伸びている。

 トヨタ自動車によると、発売1ヵ月間の累計受注台数は約3万台で、販売目標の1ヵ月間4500台の7倍近い。2012年発売の14代目の同時期の約2万5千台を上回るペースだ。

 新型は専用の車載通信機「DCM」を装備。走行データをもとに故障診断なども受けられ、時代を先取りしている。ボディーはスポーティーになり、若い世代に響くデザインになった。

「従来の購入者層に加えて、40~50歳代の次世代のリーダー層を新たなターゲットにしています」(広報)

 トヨタ自動車によると、発売1ヵ月間に注文した人たちの年代は、40~50歳代が35%、60歳以上が6割を占めた。足元でも販売は好調で、モデルチェンジは成功と言えそうだ。

 だが、クラウンを巡っては、オーナーが高齢化し新規ユーザーの開拓が難しくなっているなどの、課題も指摘されている。トヨタ自動車によると、新型の発売1ヵ月間の注文の約45%は法人。社有車やタクシーなど、個人ユーザー以外が販売を下支えしている。

『トヨタの危機』(宝島社)の著者で日本EVクラブ代表の舘内端氏は、クラウンは「時代遅れ」になっていると手厳しい。

「世間の興味は電気自動車(EV)やカーシェアリングなど次の時代に向かっています。クラウンは世間の興味から外れているのに、旧態依然の車を出して、ひたすら評価を得ようとしているように感じます」

 新型の価格(消費税込み)は460万円からで、庶民の手には届きにくくなった。

「いまの若者は、『いつかはクラウン』なんて思っていません」(舘内氏)

 高度経済成長期と違って、景気が回復しても給料が増えにくい今の時代。「頑張って働き、いつかは高級車を買う」という夢を抱くのは難しそうだ。

(週刊朝日・岩下明日香)

週刊朝日2018年10月5日号よりAERA dot.より転載