ムーア氏はトランプ大候補が勝つ理由として、他に、女性やマイノリティの台頭によって追いつめられた怒れる白人男性の支持を増やしていること、「有権者の約70%がヒラリーを信用できない」というクリントン候補の不人気の問題などをあげた。

 しかしムーア氏は「自分の考えが間違いであってほしい」と強く願いながら、この記事を書いた。「こうなってほしい」と思ってではなく、「現実に何が起きているのかを人々に認識してほしい」と願って書いたのだという。

 とくにその時は、民主党全国大会でクリントン候補が正式指名された直後で、関係者は皆、「あんなまぬけに負けるはずはない」という感じで舞い上がっていた。残念ながら、ムーア氏の警告は最後まで民主党の関係者に届くことはなく、クリントン候補はラストベルトの4州すべてを僅差で落としてしまった。

 もちろんトランプ候補が勝利した理由としては他に、コミー前FBI長官が投票日の11日前にクリントン候補の私用メール問題の捜査を再開したことを無視することはできない。それによって、それまで10ポイント前後あったクリントン候補のリードが一気に縮まってしまったのだから。

 とはいえ、トランプ氏が最初からラストベルトの票読みや選挙人票(得票数ではなく)に意識を集中させていたことは明らかであり、その点では選挙の勝ち方を心得ていたと言えるだろう。さらにムーア氏は、トランプ大統領が11月の中間選挙や2020年の大統領選でも勝利する可能性があると警鐘を鳴らす。

「人の心を惑わせ、混乱させる達人」

 トランプ大統領はいつも嘘を言ったり、狂気じみたことを言って人を驚かせ、混乱させたりしているが、そうすることで人を巧みに操り、大事なことから人の注意をそらし、自分のペースに持ち込もうとしているのではないか、とムーア氏はみている。

 しかし、このような大統領の問題行動によって、政権内が大混乱に陥っていることが、匿名の政府高官によって書かれたニューヨーク・タイムズ紙(9月6日付)の論説記事から明らかになった。

 この高官は、「大統領は衝動的で敵対的で考え方が狭く、無能である。問題の根本は大統領に道徳心が欠如していることにある」と述べ、「私は大統領のために働いているが、同じ考えを持つ同僚とともに、大統領の最悪の性向からくる無謀な意思決定を阻止するべく懸命に努力している。政権内で密かな抵抗運動が起きている」と、驚くべき実態を暴露した。