物を買うお金がない、10代の子どもの非行の入り口、転売目的のプロによる犯行、認知症の影響……。そんなありふれたイメージとは違った角度から万引きについて書かれた一冊だ。
なぜやったのか、常に分かりやすい動機があるとは限らない。周囲から真面目な人だと言われている。経済的に困っているわけでもない。にもかかわらず、繰り返し万引きに手を染める人々が一部に存在する。そのことをどう理解すればいいのだろうか。
本書『万引き依存症』はそこに「依存症としての万引き」という視点を持ち込む。そもそも、「万引き行為に依存している状態」を、どれほどの人が想像できるだろうか。女子マラソン元日本代表選手の常習がニュースになり、摂食障害との関連が一時期話題になった。「クレプトマニア」という言葉を耳にした人も少なくないだろう。だが冒頭で挙げたような一般的イメージに比べると、依存症としての万引きについては知らないことだらけだ。いったい何を思って盗んでいるのか、そもそもどんな状況に置かれているのか、いまいちピンとこないのである。