「安室奈美恵が理想の女性」
最初のアムロスは16歳のとき

 Aさん(37歳男性)が中・高生の頃、安室奈美恵ブームは絶頂を迎えていた。“アムラー”が新語・流行語大賞のトップテンに入ったのが1996年のことであるから、彼の思春期は周りがアムラーだらけであった。

 Aさん自身、安室奈美恵を最初に見た時「銃で脳天を撃ち抜かれた」ような強い衝撃を受け、以降彼女を信奉するファンとなった。安室奈美恵はAさんにとって理想の女性であり、けれども尊崇の対象でもあるのでたとえ妄想の中でも恋愛対象とするには畏れおおく、だがしかし押しとどめておくにはあまりにも強烈すぎる願望であり、「まずはいつか安室奈美恵と知り合ってみせる!」と大志を胸に、彼女の影響を色濃く受けた若い女性たち、つまり生粋のアムラーを中心に交際を重ねた。

 恋愛はしっかりして相手にもきちんとのぼせたが、心のどこかに「安室奈美恵こそ至高」という思いがあり、これが塗り替えられることはなかった。

 強いファンではあったが、商業的な貢献度でいえば他のディープなファンに比べて一歩も十歩も劣る。CDが出たら必ず買ったがライブに足を運んだのは片手で数えるくらいである。しかしそれには理由があった。

「ファンなことはファンなんだけれども、『完全なファンになってしまうのはどうなのか』という疑問があった。彼女といつか出会ってそれなりの関係に発展させていくためには、彼女と対等な立ち位置でなければならない。ファンだと彼女と対等な関係になれないのではないかと思い、ファンになることへの疑問がずっとあった」(Aさん)

 売り出されたライブ公演のチケットを予約しないことは、安室奈美恵本人には決して届かず、伝わらないであろうAさんの無言の決意表明でもあったのだった。

 世間からは“自己満足”と呼ばれるであろうこのスタンスを貫いてきたAさんだったが、最初のアムロスは1997年に訪れた。安室奈美恵が結婚を発表したのである。Aさんが16歳の時であった。