金融庁が推進していた円滑化法とは、いったい何だったのか

 金融機関に、貸し付け条件の変更などに応じる努力義務を課した中小企業金融円滑化法。その期限切れが来年3月に迫り、金融庁は “出口戦略”に向けた政策パッケージを打ち出した。

 その中身は、金融機関に経営指導などコンサルティング機能を一層充実させるよう求めること、そして企業再生支援機構(ETIC)と中小企業再生支援協議会(再生協)の機能や連携を強化することで、再生が難しい企業への支援を行いやすくすることなどだ。

 しかし、いずれもその効果には疑問が残る。

 まず、金融機関のコンサル機能は、「すでに再生不可能なところも条件変更してしまっている」(地方銀行幹部)ことに加え、そもそも金融機関にそんな能力は「あるはずもない」(中小企業関係者)との指摘が根強い。

 一方、日本航空など大型案件に支援が偏っていたETICは中小企業の再生に軸足を移す予定だが、それでも「小規模の企業の支援は無理」(地銀幹部)とみられている。

 再生協についても今年度、実績の10倍弱に当たる3000件の計画策定支援を目指し、その対応として人員を増員、処理期間を従来の3分の1に短縮するとしている。が、それは金融機関の情報を利用して資産査定を簡素化するだけの話だ。

 結局、金融庁は「円滑化法の期限切れにより企業倒産が急増する責任を問われないようアリバイ作りに必死」(地銀関係者)なだけ。出口戦略は金融機関が地道に進めるしかないが、中小企業の再生は容易でなく、円滑化法の施行から終了までの3年強で、問題が先送りされるだけに終わりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

週刊ダイヤモンド