金融庁は、昨年末、「中小企業金融円滑化法」(以下「円滑化法」)のさらなる延長方針を発表した。同法は、09年12月に、連立を組む国民新党の亀井静香金融相の肝いりで11年3月までの時限立法として導入された後、それが1年延長され、今年3月に期限を迎えることになっていたものである。
確かに日本企業は、震災や円高の影響を受け、経営環境が悪化している。一方、筆者が連載第1回で述べたように、銀行は資金を必要とする企業に対する社会的責任を十全に果たしているとは言い難い。
しかし、今回の円滑化法の延長は、そのいずれの問題に対しても解決策になっていないどころか、弊害の方がはるかに大きい。筆者がそう考える理由は、概ね以下の6点であり、本稿ではそれぞれについて簡単に検証してみたい。
①中小企業とそれ以外の企業を分けて対応することの問題
②実態とかけ離れた自己査定基準
③中小企業のモラルハザード
④担保・保証の重視
⑤企業再生に繋がらない円滑化法
⑥産業再編の阻害
中小企業とそれ以外の企業を
分けて対応することの問題
銀行監督は、銀行が信用リスクをはじめとする各種リスクを、どのように管理しているかをチェックする性格のものであるが、特に信用リスクについては貸出資産の「自己査定」を的確に行ない、倒産確率やその場合の回収可能性に応じて、正しく引当・償却が行われているかが検証される。
その際にどういう基準で自己査定を行うかは、実態的には金融庁の金融検査マニュアルに細かく規定されている。本来であれば(そして元々そうであったのだが)、その自己査定基準は、企業規模に関係なく適用されるべき性格のものであって、個々の企業の個別事情によって特別扱いが必要なのであれば、それも企業規模に関係なく、個別対応をすればいいのである。