「この部署では大変だから、乙支社に戻ってはどうかね?」

 Aはその言葉を聞くと、ショックのあまり体中から力が抜けていった。Aはその後、不眠、食欲不振、めまい等の症状がますます悪化、ついには会社を休職する事態になってしまった。

パワハラ対策で相談、
社労士はどんなアドバイスをしたか?

 Aが休職したことを聞いたE人事部長は、F社労士に電話をかけ状況を嘆いた。

「パワハラ防止のために相談窓口を開設したのに、早くも休職者が出たよ」

 F社労士は、「そう落ち込むなよ」と彼を慰めた。

「ありがとう。それにしても上司が窓口に相談に来た部下のA君を叱責するとは…」
「パワハラに対する管理職の認識が甘いんじゃないか?」
「先日、パワハラの研修を行ったばかりなんだけどな」
「パワハラをしている自覚がなければ研修しても効果はないよ」
「どうすればいいんだ?」
「1回で終わらせるのは禁物。手を変え品を変え、口を酸っぱくして何回も行うことだよ」

 F社労士はE人事部長に対し、以下の5つをアドバイスした。

(1)Aへの対処を考えること。
(2)B主任、C次長、D部長の処遇を考えること。
(3)管理職にパワハラ相談窓口開設の趣旨を徹底させること。
(4)パワハラ相談窓口の担当はE人事部長が適切なのかどうかを検討すること。
(5)パワハラ研修は最低年1回行うこと。

調査の結果、パワハラ認定は3人
人事部が下した彼らの処遇は?

 E人事部長は、休職中のAの状況を確認した。主治医の診断書によると軽症のため3ヵ月後には復職可能とのことだった。企画部は業務内容がハードな部署なので、E人事部長は心配だったが、本人の希望を尊重し、復職後は企画部勤務とした。

 B主任に関しては調査の結果、Aだけでなくこれまで複数の部下に対しても、同様の態度を取っていたことがわかった。

・見下したような態度、能力以下の仕事しか与えない
・仕事で失敗をすると大声で怒鳴り散らし、以後は無視する
・挙げ句の果てには仕事をまったく与えずに退職を迫る 等々

 これは明らかに「パワハラ」である。自身の激務が原因でストレスがたまり、立場が一番弱い新入り部下をいじめることで憂さを晴らしていたようだ。