「われわれは自前主義は捨てました。三井造船(現三井E&Sホールディングス〈HD〉)が100周年を迎えた昨年には、はっきりその方針でいくと決めていた」
今年8月下旬、三井E&SHDの造船事業会社である三井E&S造船の古賀哲郎社長が語っていた覚悟は本物だったようだ。10月11日、三井E&S造船は、来年4月に中国の民営造船最大手である揚子江船業と造船合弁会社を設立すると発表した。
合弁会社では、三井E&S造船の設計力や建造ノウハウと、日本の3分の1~5分の1という中国の安価な人件費を背景とする揚子江船業の建造力を生かし、まずはばら積み貨物船の建造から始める。
それだけではない。将来的には大型のタンカーや、液化天然ガス(LNG)船の建造ももくろむ。特にLNG船は、大気汚染対策に躍起となり、LNGの輸入を急増させている中国には必須の船だ。中国は自国の物流は自国の船で行うという「国輸国造」の方針を掲げているから、なおさらである。さらに、調達面でも親会社を含めた共同化なども検討する考えだ。
三井E&S造船は今年5月にオーナー系の造船専業会社である常石造船と業務提携を結んだばかり。ただ、同社とは今後マーケットの拡大が見込まれる東南アジアの需要を共に取り込んでいくもようで、今回の合弁会社とは協業の範囲を異にするという。