かつて日本経済を引っ張った造船業界は、今や中国・韓国勢に追い抜かれ、青息吐息だ。そんな中で昭和的な義理人情と価格交渉で国内首位に立つ今治造船は、中国・韓国勢の勢いに負けじと一人気を吐く。野武士集団とも言われる今治造船の内実に迫った。*週刊ダイヤモンド2018年9月8日号第2特集『首位今造ですら赤字 造船「敗戦処理」』より特別公開します。(週刊ダイヤモンド編集部/新井美江子)

造船業界業界首位の今治造船は”野武士集団”と呼ばれるが、それでも赤字に転落するほど、環境は厳しい。かつて日本経済を引っ張った造船業界は、復活できるのか。 Photo: 朝日新聞社、Mieko Arai

 愛媛県は今治市。じめじめとした蒸し暑さの中、今治市役所から今治港に向かって少し歩くと、その会社はどこか郷愁を誘うようなただずまいで、ひっそりと立っていた。

 瀬野汽船──。ホームページも開設していない従業員わずか23人の会社ながら、約50隻の船を保有し、日本郵船などの大手海運会社と用船契約を結ぶ有力船主だ。

 2000年に建造量世界一の座を追われ、すっかり中韓勢の後塵を拝すようになった日本の造船業。三菱重工業の造船会社である三菱造船といった総合重工系の名門は、年々存在感が薄れている。

 一方で、中韓勢に負けじと建造量を増やしてきたのが今治造船(愛媛県)や大島造船所(長崎県)などのオーナー系の造船専業会社だ。