レビュー
ヒラリー・ロダム・クリントン著
髙山祥子 (翻訳)
光文社、2,160円(税込)
アメリカの歴史上、もっとも結果予測が困難だといわれた大統領選。「もしかすると、もしかするかもしれない」という気持ち半分、「いや、まさか」という気持ち半分。アメリカ国民だけでなく、世界中の人々が固唾を呑みながらその行方を見守り、当選発表を聞いたことだろう。
本書『WHAT HAPPENED 何が起きたのか?』の著者は、まさにその渦中にいたヒラリー・ロダム・クリントンその人である。読者は彼女の目を通して当時を振り返るとともに、彼女が遭遇した数々の苦難を追体験することになる。実際に体験した者でなければ知り得ない世界だ。もちろん読みごたえは抜群である。生々しい敗北感と絶望、そしてドナルド・トランプ大統領に対する正直な心の内が吐露される。
政界というきわめて男性的な社会の中で、女性が重職に就くことがいかに大変なことか。本書を読むかぎり、アメリカにおいても女性の地位はまだ確立されていないらしい。一方で女性だからこそできたこともあったと著者はいう。彼女の経歴や価値観などを知るにつけ、芯が強く、本当に国民のために行動していける人物ということが伝わってくる。
あの大統領選挙の最中にいったい何が起こっていたのか。彼女が相手にしていたのはいったいどのような人物だったのか。そうした知的興味を満たしてあまりある本書のなかから、少しばかりのエッセンスを取り出しておいた。ぜひご一読いただければと願う。(立花 彩)