マケイン上院議員死去で感じる
「トランプ分断」の深刻さ
米国では、8月25日に亡くなったジョン・マケイン上院議員の告別式が、9月1日に首都ワシントンのワシントン大聖堂で行われた。告別式には党派を超えた多くの参列者が集まった。
マケイン議員の告別式は、そう遠くない昔の米国では、党派を超えた友情が珍しくなかったことを雄弁に示していた。告別式では、共和党のジョージ・W・ブッシュ、民主党のバラク・オバマという2人の元大統領が、相次いで弔辞を述べた。
言うまでもなく、ブッシュ元大統領は2000年大統領選挙の予備選挙、オバマ元大統領は2016年の大統領選挙で、マケイン議員と戦った間柄である。かつての政敵であり、所属政党も違う2人の政治家を、マケイン議員は同じ演台に立たせてみせた。インターネットでは、参列しているブッシュ元大統領が、横に座っていたオバマ元大統領のミシェル夫人に、こっそりキャンディを手渡す映像が拡散し、微笑ましい話題を提供している。
民主党から無所属に転じたジョン・リーバーマン元上院議員は、2008年の大統領選挙に出馬したマケイン議員から、所属政党が違うにもかかわらず、副大統領候補に登用する構想を持ちかけられた経験談を披露した。「党派が違うのに?」とリーバーマン元議員は不審がったが、マケイン議員は「それが大事なんだ」と超党派協力の必要性を力説したという。
幸福な融和の構図を描いたかに見えるマケイン議員の告別式は、深い断絶の存在を浮き立たせる出来事でもあった。複数の元大統領が参列するなかで、現職のドナルド・トランプ大統領は、招待者リストに含まれなかった。トランプ大統領とその支持者たちは、ワシントン大聖堂とは別の「教会」に籠っていたようなものだ。厳粛ながらも温かな告別式とはかけ離れた世界が、今の米国には確かに存在している。