上場から2年、今やJR九州はしっかり収益基盤を確立した。国鉄分割民営化当時に「経営困難な三島会社」とされていた同社だが、いまだ経営難にあえぐJR北海道、JR四国とは何が違ったのだろうか?そこから見えてくるのは、完全民営化では解決することのできない地方ローカル線の現実であった。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

JR北海道、四国、九州
「三島会社」の命運くっきり

年間2億6000万円もの赤字を出している日田彦山線の添田〜夜明間昨年の九州北部豪雨で一部区間が不通となった日田彦山線。元々赤字区間であることから、鉄道を復旧するのか、それともバスなど代替交通手段に転換するのか、地元自治体を交えた議論が続いている Photo:PIXTA

 2016年10月25日にJR九州(九州旅客鉄道)が東証1部に新規上場してから丸2年を迎える。

 公開価格2600円を500円上回る3100円の初値を付けてスタートし、上場後の最安値は2016年11月の2851円、最高値は2017年6月の3910円、10月19日時点の株価は3350円である。上場から半年ほどは海外機関投資家の思惑も絡んで値動きが大きかったが、直近1年の株価はJR東日本やJR西日本、大手私鉄と同様のトレンドで推移しており、内需関連株の一員として定着しつつある。

 上場を達成したJR九州に対して、深刻な経営危機の最中にあるJR北海道と、成長の青写真がまったく描けないJR四国。国鉄分割民営化当初、自立経営すらも不可能と思われていた「JR三島会社」の明暗は、ここに来てくっきりと分かれている。

 JR九州のこれまでを振り返りながら、今後の課題について考えたい。

「JR北海道の苦境は一体どこに原因があるのか」でも取り上げたように、国鉄分割民営化では、収益の見込めるJR東日本、JR東海、JR西日本の「本州3社」には国鉄債務の一部を継承させる一方、収益の見込めないJR北海道、JR四国、JR九州の「三島会社」には債務を負わせず、逆に鉄道事業の赤字を埋める経営安定基金を与えて出発した。

 JR九州は民営化初年度となる1987年度決算(単体)において、営業収益1298億円、営業費用1587億円で、288億円の営業損失を計上している。営業費のうち減価償却費は241億円であり、償却前赤字のきわめて厳しい経営状態であった。それを283億円の経営安定基金運用益で埋めることで、ようやく15億円の経常利益を出している。

 3877億円の経営安定基金で283億円の運用益を出したのだ。バブル期とはいえ、利回り率7%以上の運用になるが、実態は政府からの運営補助金である。経営安定基金は当面の赤字を補填しつつ経営改善を進めていくことを前提にした制度であり、JR九州は早急に「鉄道事業の赤字削減」と「非鉄道事業の収益拡大」に取り組まねばならなかった。