水メジャーによる買収で料金上昇も
世界では「再公営化」がトレンド

 吉村氏によれば、水道民営化に積極的な宮城県の村井嘉浩知事は、上下水道、工業用水を合わせて官民連携すれば、今後30年間で335~546億円のコスト削減が見込め、現行体制と比較して「コンセッション方式」の方が総事業費をどれだけ削減できるかを示すVFM(Value for Money)も現在価値換算で166~386億円という試算を出している。

 ただし、水道民営化は決してメリットばかりではない。注意すべきなのは水メジャーと呼ばれる、上下水道事業を扱う国際的な巨大企業の存在だ。1990年代、世界銀行が途上国に対して水道インフラ事業に融資する際、水道民営化の義務づけを推し進めた。米国など先進国でも水道民営化が進んだが、その副作用は大きかった。

「1兆円以上の売り上げと豊富な自己資金を持つ、フランスや英国などの水メジャーが参入したことで、ボリビア、フィリピンのマニラ、インドネシアのジャカルタ、米国のアトランタなどで、水道料金が2~5倍値上げされました。その上に、水質やサービスの低下が生じて、死者が出て訴訟問題に発展した地域もあります。そのため、2000年から2015年の間に世界37ヵ国で民営化されていた水道235ヵ所が再公営化(民から官へ)に戻りました」

 水道料金収入が減っているとはいっても、現状でも料金収入2兆3000億円の市場規模がある日本も、水メジャーに狙われている市場だ。ではなぜ水メジャーが日本市場に注目するのか?2013年4月、米国のCSIS(戦略国際問題研究所)で、麻生太郎副総理が「日本の水道はすべて民営化します」と国際社会に向けて発言したからだ。吉村氏の元には日本の総合商社のみならず、フランスの水メジャーからも問い合わせが来たという。