要約者レビュー
現代人は、たえまない情報の洪水で溺れかかっている。さらにフェイクニュースのような存在も考慮すると、もはやどの情報を信じてよいのか、ますます見分けがつかなくなっているといえよう。
左巻健男、272ページ、平凡社、800円(税別)
こうした状況を逆手にとり、科学的な根拠がないモノを、さもあるかのように売りつけている人々が後を絶たない。とくに、健康法や健康食品は、ワラをもつかみたい人を餌食にする悪質な商売だ。人間は、弱っているときこそだまされてしまう。たとえば、アップル社の創業者スティーブ・ジョブズがそうだったように。
科学的な根拠のない商品は、日常のいたるところに転がっている。しかし著者によれば、世の中にある健康食品や健康飲料のほとんどは、その効能に科学的根拠がないという。もし本当に治癒効果があるなら、医薬品として承認されるはずだからである。
本書『暮らしのなかのニセ科学』は、現代社会に溢れている健康食品や健康法を調査し、「科学的根拠がない!」と一刀両断する快著だ。無農薬野菜に潜むリスク、ミネラルウォーターを上回る水道水の安全性、マイナスイオンやプラズマクラスターの意味のなさなど、私たちの「常識」に反する指摘も数多い。
すべての健康食品や健康法の科学的根拠を、市井の人がひとつずつ確認することは、現実的には不可能である。だからこそ、専門家による調査・考察の重要性は計り知れない。悪質な文言にだまされたくなければ、本書を読むべきだ。 (谷田部 卓)
本書の要点
(1) 人はだまされやすい生き物である。スティーブ・ジョブズのような高い知性の持ち主でも、ニセ科学にはまりこむことはままある。
(2) ニセ科学は、とくに健康をめぐる分野で蔓延している。病気への不安につけこむような、怪しげな健康情報に気をつけるべきだ。
(3) 健康食品は、有効性や安全性の科学的根拠がなくても販売できてしまう。サプリの有効性や安全性は、科学的に証明されているわけではない。
(4) 水に関する商品にはとくに気をつけるべきだ。水素水、マイナスイオン水、波動水などは、すべて科学的根拠がない。