子どもを救えるセーフティネットを
民間研究会が準備中の「提言書」

 子どもに関わるのは、保護者と児童相談所だけではない。むしろ、虐待されている子どもの存在は、近隣住民も、保育所や幼稚園も学校も、病院も、その地域で活動する民間団体も、「みんなが知ってる」ということが多い。もちろん、見るに見かねて通報したり、役所に駆け込んだりする人もいる。だから、行政も児童相談所も知っている。

 しかし、各機関の人員は不足しており、しばしば「動きたくても動けない」という状況にある。子どもが家庭で暮らしていると危険な状況なのに、判断を誤ることもある。家庭ではなく施設で過ごす必要が認識されても、施設に空きがあるとは限らない。集団生活の難しい子どもに、施設以外の選択肢が常にあるとは限らない。居住地から遠い施設に入所すると、暮らしてきた地域から切り離され、学校も転校することになる。

 また、「個人情報保護」の壁もある。近隣の気がかりな子どもについて、繰り返し繰り返し、地域の住民や民間団体の人々が児童相談所や役所に相談を繰り返し、やっと介入が行われて子どもが一時保護されても、その人々に見えるのは「あの気がかりな子どもがいなくなった」ということだけだ。

 子どもは保護されたのか。今、どこの施設にいるのか。家庭に帰ってくる可能性はあるのか。帰ってくるのはいつなのか。その後も子どもを支えられるはずの人々は、何も知ることができない。子どもと保護者の「個人情報」だからだ。

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 子どもを虐待してしまう親たちは、自分が責められることを怖れている。親としての責任を果たせていないことは、重々承知している。保育園や幼稚園も学校も、児童相談所も役所も、そういう親の負い目を突いてくる存在だ。もしもそういった機関が、「子育てがうまくいっていないんです」と駆け込んだ親を助けてくれる、困った時に安心して頼れる場になったら、虐待をめぐる状況は一変するだろう。

 今、大阪市生野区で活動する「生野子育ち社会化研究会」では、政府の「児童虐待防止対策」を自治体の中で機能するものとするための提言書を作成している。研究会に所属する団体や個人の経験と試行錯誤を凝縮した提言書は、11月半ばにも大阪市に提出される見込みだ。

 私も研究会の一員として、提言書が大阪市の子どもたち、そして日本全国の子どもたちの環境を変えることを夢見ている。

(フリーランスライター みわよしこ)