サガン鳥栖。竹原社長サポーターミーティングで熱く語りかけるサガン鳥栖・竹原稔社長 Photo by Naoto Fujie

逆風にさらされた時に、組織として何をするべきか。初めて経験するJ1残留争いから抜け出せないまま、残り5試合となった段階で電撃的な監督交代を決断。ピッチの外でもスポンサーの撤退報道が飛び交っていたサガン鳥栖の場合は、フロント幹部があえてサポーターと対面する場を設けた。約200人のサポーターが詰めかけた先月18日のサポーターミーティングで、サガンを運営する株式会社サガン・ドリームスの竹原稔代表取締役社長(57)が発した熱い言葉の数々から、地方の小クラブを着実に成長させてきた竹原社長の独自の危機管理術が伝わってくる。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「辞めろ、こらっ!」
竹原社長に罵倒の電話も

 どのようにして調べたのか。サガン鳥栖を運営する株式会社サガン・ドリームスの竹原稔代表取締役社長の自宅や携帯電話へ、受話器の向こう側から「辞めろ、こらっ!」と罵倒する電話が、よくかかってくるという。それも昼間ではなく夜中に、だ。

 JR鳥栖駅に隣接する本拠地ベストアメニティスタジアム内にある、サガン・ドリームスの事務所宛にも同様の電話がかかってくる。差出人の名前が記されていない自分宛の手紙の封を切る時には、竹原社長は苦笑しながら「少なからず緊張します」と偽らざる心境を明かす。

 サガン・ドリームスの社員が営業先で「J2に落ちたらスポンサーをやめる」と、厳しい声を受けることもある。決して小さくはない逆風にさらされていた状況で、サガンはあえてサポーターと直接対面する場を設けた。

 本拠地内で先月18日に開催されたサポーターミーティング。クラブの公式HPで同9日に告知され、3日後の12日には午後7時開始などの詳細が追加で発表されたミーティングは、約200人ものサポーターが詰めかける盛況ぶりを見せた。

 竹原社長以下のフロント幹部とサポーターが顔を合わせる場を、サガンは状況に鑑みながら、必要と判断した時に随時設けてきた。今シーズンならば開幕直後の3月13日、5月6日の清水エスパルス戦のキックオフ前に続いて今回が3度目の開催となる。

 特に5月は泥沼の7連敗を喫し、順位も暫定ながら最下位に沈んでいた。この時はサガン・ドリームスの事務所前で約40分間対応したが、もしJ2へ降格したらどうするのかと、サポーターの中から怒号が飛び交っている。