ナニワ金融道の舞台はボロボロのビル【イメージ写真】 『ナニワ金融道』の舞台は大阪のボロボロなビルにある貸金業者だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA
『ナニワ金融道』の魅力は、下品さの中にあるリアルな人間模様 『ナニワ金融道』の魅力は、下品さの中にあるリアルな人間模様

【おとなの漫画評 vol.8】
『青木雄二漫画短編集 完全収録版』青木雄二
2018年9月30日発行 廣済堂出版

『ナニワ金融道』青木雄二
全10巻 1999年発行 講談社漫画文庫

『青木雄二漫画短編集 完全収録版』は、2006年に出版されていた2冊の著書を合体し、その後発見された原稿を収録したアンソロジーである。代表作『ナニワ金融道』以外のすべての作品12本を網羅したのだそうだ。さらに、『ナニワ金融道』連載第1回と最終回を再録しており、コレクターズ・アイテムとなっている。

 本体の『ナニワ金融道』は講談社文庫版全10巻を入手できるほか、ときおりコンビニ向けに再編集された版が店頭に出る。つまり現在でも容易に読むことができるのである。

 最終話のこの物語では「海事代理士」という専門職がカギを握っている。連載当時、このような資格を初めて知ったという読者が多かった。船舶は資産なので、登記などの法定項目がたくさんあるわけだ。耳慣れぬ国家資格の仕事を背景にした物語が最終話のテーマで、最後まで読者を驚かせた。

動乱のバブル末期に連載開始
大阪の怪しげな貸金業者が舞台

『ナニワ金融道』の連載が「モーニング」(講談社)で始まったのは1990年だった。バブルの頂点を日経平均株価の頂点だとすれば、1989年12月末に株価は史上最高値を付けている。90年に入ると株価は下落を始めるが、不動産価格はまだ上昇を続けていた。