100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到し、発売即、続々と異例の大重版が決まっている。
本記事では、理不尽な要求を強引に通そうとして威嚇してくるクレーマーにもひるまない、気を強く持つためのテクニックを特別掲載する。(構成:今野良介)
「臍下丹田呼吸法」をマスターしておく
クレーマーに立ち向かうトレーニングを紹介するために、私が警察官だった頃の話を紹介します。
警察学校卒業後は、否が応でも犯罪の最前線に立たざるをえません。たとえば、「覚醒剤の乱用者が刃物を持って暴れている」と無線で連絡が入れば、現場にかけつけなければならないのです。
正直なところ怖いです。警察官にも恐怖心はあります。
ある日、先輩警察官が刃物を持って暴れている酔っ払いに立ち向かい、警棒で刃物を叩き落したつもりが手元が狂い、逆上した酔っ払いに太ももを刺されました。
この先輩は剣道五段でしたが、それにもかかわらずこんな失敗をしたのは、一瞬の恐怖心から冷静さを失ったからです。
そういうときに冷静であり続けるために、「いざというときのために覚えておけ」と教官から教えられたのが「臍下丹田呼吸法」です。臍下丹田とは、東洋医学でいう「体内の氣が集まるところ」です。臍下丹田呼吸法は、ヘソの下と恥骨との間の丹田に力を込めて、ゆっくり息を吐き出す呼吸法です。
やり方は簡単です。
(1)6つ数える間に息を吐き切る
(2)空になった肺に、ゆっくり3つ数えながら空気を入れる
(3)満杯になったら、丹田に手を当てて、1秒待つ
(4)「よし!」と気合を入れる
一連の動作にかかるのは約10秒。これだけで、毅然と対応する準備ができます。
パニックとは、いわば体内の氣が飛んでいる状態です。そこに氣を入れ直すことによって冷静さを取り戻すのです。私は今でも、手強いクレーマーを相手にするときには、毎回実践しています。
クレーマーの自宅を訪問したり電話をかけるとき、「死んでしまえ!」「この役立たず!」といった人格を否定されるようなセリフを浴びることがあります。
「オラオラ!なめとんかコラ!おい!」なとど激しく絡まれたりしても、臍下丹田に力を込めれば、気持ちを強くもつことができます。
臍下丹田呼吸法と同様に、「数息(すうそく)」という方法でも、呼吸を整え、雑念を取り払うこともできます。これは、座禅を組んで、息を吐くときに1から10まで数をカウントすることで、呼吸に意識を集中し、精神を安定させる呼吸法です。吐き切れば、吸うことは意識しなくてもできます。
要人警護のSPに学ぶ「足指ストレッチ」
クレーム対応で窮地に追い込まれそうなときは、ちょっとした動作で「心のスイッチ」を切り替えることもできます。
要人警護のセキュリティポリス(SP)は、日頃から「心技体」を統制しています。一般の人が、SPの技術をそのままの形で取り入れることは無理ですが、そのエッセンスを吸収することはできます。
その代表的なものが「氣」の働かせ方です。