それもそのはずだ。エッサールは新日鐵住金にとってどうしても欲しい案件だった。何しろ、同社は成長市場のインドに高炉など、鉄鋼製品の元となる「銑鉄」を造る上工程から備え、年間1000万トンの生産能力を持つ同国4位の鉄鋼メーカーなのだ。

 社内では、売りに出された当初から買収のためにそろばんがはじかれたが、新日鐵住金単独では金額的にとても手が出ない──。

 折も折、共同買収を持ち掛けてきたのが世界最大の鉄鋼メーカー、ミッタルだった。

 ミッタルは「イタリアの鉄鋼大手、イルバの買収で資金が不足していた」(新日鐵住金関係者)。その上、エッサールの再建に新日鐵住金の技術も生かしたいと考えていたといわれる。理由はどうあれ、新日鐵住金にとっては、千載一遇のチャンスが巡ってきたわけだ。

 ところが、1次入札では債権者委員会がミッタル・新日鐵住金連合を含む応札した2社を「不適格」扱いにするなど、エッサールの争奪戦は混乱を極めた。ミッタルが不適格の原因を取り除くことで資格は回復したものの、再建計画の再提出時に買収価格を15%弱つり上げることになるなど、ほろ苦さを残す買収となった。

 それでも、「エッサールを逃せば、今後、簡単にインドに高炉を持つことはできない」(別の新日鐵住金幹部)のも確かだ。まずは生産効率を上げ、エッサールの強みである建築・建材向け製品の販売を強化。将来的には、ハイエンドの自動車鋼板の展開ももくろみ、大型投資の“回収”を急ぐ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)