特に大きい音を出す激しめのロックで、路上ライブで使えるチープな機材でもそれを追求していたので、警察からは目の敵にされていた。しかし、メンバーは特に反体制というわけでもなく、品行方正な大人の集まり。だから、「お巡りさんに怒られたらおしまい」というスタンスでやっていた。

 12月のある日、上半身裸で路上に転がるなどしながらライブをしていると、旅行者風の男性が興味を持ったらしく話しかけてきた。彼がその後長い付き合いとなるマレーシア人Aで、年は私と1つ違い。youngerだったかolderだったか忘れたが、国境を越えて同世代のシンパシーを私は持ったし、それはおそらく向こうも同じであったと思う。

 彼は音楽誌に記事を書いているライターで、日本に旅行に来ているのだといい、滞在期間中われわれのライブに足を運んでくれた。そして、お巡りさんに怒られているところをいつの間にか写真に収めていて、うれしそうに見せてくれもした。

 Aは実にさまざまな国に旅行に行っていたようだが、その中でも特に日本が気に入っていて、その後何度も来日した。1週間近くわが家に滞在していったこともあった。久しぶりに会うたびに腕のタトゥーが増えていって、目を引いたのはゴジラのイラストと、日本語で大書きされた「ビールが欲しい!」だった。

 日本滞在中、居酒屋でそのタトゥーを見せれば注文は事足りるそうである。

手をつなぐことへの認識は
イスラム教との関係か

 マレーシアというと日本人にはあまりなじみがなく、「東南アジアにある国」くらいが一般的な認識かと思われる。私もそうだったが、Aと知り合って彼の国を知っていくにあたり、かなり興味深い文化的背景を持つことがわかってきた。

 マレーシアは、西側のマレー半島南部と東側のボルネオ島北部に分かれていて、首都のクアラルンプールはマレー半島に位置する。多民族国家で、少数の先住民族に加えてマレー系、チャイニーズ系、インド系の3人種。宗教も多様で、イスラム教を筆頭に仏教、ヒンズー教、キリスト教などがある。

 Aはチャイニーズ系マレーシア人で、マレー語と英語を話す。中国語もある程度話せるそうだが得意ではないそうである。マレーシアの公用語はマレー語(マレーシア語)だが、人種が多く言語も多様なので、準公用語の英語も広く話されている。