「こんなにいとおしい存在が世の中にあるんだと思った」など、子どもが生まれた日の感動を語る人は多い。筆者も確かに感動した。しかし一方で、批判を覚悟で言えば、事前に予想していたよりは「この子がかわいい」と思えない。家で仕事をする自営業であり、一般の「パパ」よりはわが子に接する時間が長いはずなのだが。一体なぜなのか。先輩である「父」たちに「いつから子どもをかわいいと思えたのか」を聞いてみた。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)
「わが子はかわいい」という父親
その言葉はどこまで本気か?
脳科学の話なのだが、人には“オキシトシン”と呼ばれるホルモンがあり、近年では「愛情ホルモン」や「親和ホルモン」といったいくつかの呼び名で知られるようになった。これが分泌されると癒やしの効果があり、ストレスがやわらいだり幸せな気分になったり他者に友好的な気持ちになったりする。
このホルモンは主に他者とスキンシップを図る際に分泌される。“他者”とは恋人や飼い犬など信頼が置ける相手だ。オキシトシンは触れ合えば触れ合うほどドンドコ分泌されるので、スキンシップを重ねるにつれて愛情が深まっていくことになる(理論上は)。
女性は出産時にこのオキシトシンが一気にドバッと出るので、生まれ出てきた瞬間からわが子をそれなりにかわいい・いとおしいと思える確率が高いのだが、男性はそうはいかない。子どもが生まれた瞬間、父親のわが子に対するオキシトシン的愛情はゼロであり、子育てしていく中でわが子と触れ合い、少しずつオキシトシンを分泌し蓄積されることで「うちの子半端なくかわいくいとおしい」と思うようになるそうだ(理論上は)。
であるから、育児に積極的な父親ほどオキシトシンが出てわが子をより溺愛していくという構図も成立しやすい。