ある大きな結婚披露宴
一向に始まらない式次第
フレキシブルといえば、国全体がゆるっとしている印象もあった。Aがマレー系マレーシア人の女性(ムスリム)と結婚することになり、彼の結婚パーティーに呼ばれてマレーシアを訪問したことがあった。
なおAの結婚相手は、見たところ毎日のお祈りなどをしない、戒律に対してゆるやかな信徒だったが、結婚するに当たって相手に合わせてイスラム教へと改宗する必要があったようである。
移動の際、スマホのアプリを使って個人タクシーを呼ぶのだが、ほぼ毎回必ず「あと5分で行きます」というメッセージが表示される(一度だけ「あと6分で…」と表示されたことがあった)。そして5分後には来ず、10分くらいしたら来る。
駅のホームには、日本の都市部で見られるような文字が横に流れる電光掲示板がある。
そこに流れるメッセージが「あと5分で電車が来ます」である。「電車は日本みたいに時間通りに来ることはない」とAから聞いていたがどうやらそのようで、5分を前後して電車が到着するわけである。「あと5分」というフレーズが非常に好まれて用いられていて、それは必ずしも正確な5分後を表わすのではなく、「5分以内くらいになんとかするよ」という気持ちが伝えられているのであった。
そういった意味でAの結婚式も実にマレーシアンスタイルだった。
ホテルの大宴会場を夕方から深夜まで借り切った、260人が参列する豪華な結婚披露宴であった。すでに家族だけでマレー式の結婚の儀を終えていたから、格式ばったプログラムは省略されていたようだが、日本の結婚披露宴に似ているところがいくつもあった。