今年5月に創業100周年を迎えた松井証券の4代目社長、松井道夫氏に今後の経営方針や後継者の考え方、配当方針などを聞いた。
──今や「フィンテック1.0」とも称される国内初のネット取引サービスを始めてから20年がたちましたが、今後の改革の方向は。
ネット取引に伴い売買コストがべらぼうに安くなったのは事実です。ただし過当競争が起きてこの変革は10年ほど前に終わりました。
一方、これからはブロックチェーン(分散型台帳)の発展などでもっと劇的に、商売の枠組みが抜本的に変わる可能性があります。人間の作業はAI(人工知能)やロボットがやってくれます。「働く」の意味は、人が「動く」から「考える」に変わっていくのです。
そんな中、今後の課題は21世紀にふさわしい組織をつくること、これに尽きます。従来と価値観の異なる若い人を中心とした、新しい世の中にフィットした組織にならないと、柔軟な発想ができずに消費者から肘鉄を食うでしょう。
年寄りがしゃしゃり出ていいことなんて一つもない。次世代がちゃんとモチベーションを持って働ける組織をつくり出すのが一番大事で、それをつくった会社が恐らく21世紀の勝者になると思います。
規模が大きいとスピードは落ちます。僕は徹底的に考え、10年ほど前から規模を大きくするのはやめようと決めました。規模が小さければ会社がやり方を間違えても、社員が路頭に迷う可能性は低い。