だが、この連載は、英国のEU離脱に関して、短期的な日本経済への悪影響だけに焦点を当てる議論と一線を画してきた(本連載第134回)。本稿も、一見カオスにしかみえないEU離脱交渉を巡る英国政治から、「民主主義の凄み」が示されているのだと主張する。

「ポピュリスト」を現実化するには
一度政権担当させてみればいい

 ドナルド・トランプ大統領の登場に代表されるように、世界中にポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっている。欧州では、フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首は、2017年のフランス大統領選挙で決選投票に勝ち残った(第162回)。また、2017年12月にはオーストリアで、2018年5月にはイタリアで、極右政党が参画する連立政権が相次いで誕生している。

 ドイツでも、アンゲラ・メルケル政権の移民政策に批判が集中し、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が台頭している。メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)、は地方選での大敗が続き、首相は12月の党大会で実施される党首選への立候補を断念する意向を表明した。そして、南米・ブラジルでも、女性、黒人、性的少数者への相次ぐ差別発言で「ミニ・トランプ」と呼ばれるジャイロ・ボルソナロ氏が大統領選に勝利した。

 しかし、これらのポピュリズムの広がりに対する筆者の考えは、「一度、政権をやらせてみたらいい」である。極右政党が主張する「移民排斥」や斜陽産業の雇用を守る「保護主義」は、コアな支持者だけを相手にしていればいい時は、歯に衣着せず気持ちよく訴えることができる。だが、政権を獲ったら、そうはいかなくなる。

 現代の国際社会では、生産・流通のサプライチェーンや集団安全保障体制が、さまざまな国家の間で網の目のように複雑に絡み合っている。外国を排除して一国だけで生き抜くなど、経済的にも安全保障的にも不可能だ。政権を運営する立場になれば、あっという間にそのことに気づかされることになる。次第に極右政党の政策は現実化し、穏健な中道右派のようになっていくのだ。

ポピュリストが現実化する
典型例は日本の安倍政権

 実は、その典型的な事例は、日本の安倍晋三政権かもしれない。首相就任前の安倍氏が、Facebook等で、憲法、安全保障、教育、歴史認識などについて保守的な言動を繰り返していたことを知っている人は少なくないだろう。しかし、首相就任後は保守的な「やりたい政策」を後回しにして、国民が望む経済政策を優先し、「アベノミクス」を推進した(第163回)。