世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。
超レッドオーシャンなワイン市場
世の中には約3万ものワイン銘柄が存在していると言われています。さらに、ワインには生産年(ヴィンテージ)があるので、それまで考慮するとワインの種類は膨大な数になるでしょう。
そのためワイン市場は、競争の激しいレッドオーシャンなマーケットです。消費者に選ばれるのは並大抵のことではありません。確固たる立ち位置を勝ち取るには、さまざまな戦略が必要になります。ワイン通をターゲットにした高級ワイン路線に徹するのか、はたまた幅広く受け入れられるテーブルワインとしてのブランドを確立するのか。それぞれのワイナリーが、日々さまざまな戦略を練っています。
しかし、それも一筋縄ではいきません。こだわりを持つワイン通は、価格だけではなく、産地やヴィンテージ、ぶどうの品種、評論家や口コミのコメントなども考慮に入れ、お気に入りの1本を選びます。
また、お気に入りが見つかっても別の銘柄を選び冒険を楽しむのがワイン通の傾向であり、気まぐれな消費者の心をつかむのは簡単ではありません。単純に価格競争に徹したとしても、結果的に共倒れになってしまいますし、レッドオーシャン市場で大手企業に飲み込まれていくケースも少なくないのです。